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草木国土悉皆成仏

梅原猛草や木や土地すべてのものが仏に成ることができるという思想で日本仏教の中心の思想になっているが、本来インドにはそのような思想はない。中国で道教思想と組み合わさったとも考えられているが中国では受け入れられず、それが日本に伝わり、中国では受け入れられなかったものが、日本ではすんなりと受け入れられた。それは神道との融合による理由が大きいのは明らかで、このようなアニミスティックな思想は、日本人の考え方、感じ方、しいては美意識にも影響を与え日本人の独特な「美」を形成する主軸になっていると考えられる。

仏教美術の代表格である木彫の仏像の文化が日本で花開いたのも、古い大きな樹に神が宿ると信じられた樹木崇拝による影響が強いと思う。勿論、白檀を用いた仏像の影響は当然考えられるがそれだけでは日本の木彫の仏像の急激な広がりを説明するには乏しいのは明らかだ。大陸から来た仏像は日本のアミニスティックな思想と融合し新しい境地を形成したのは言うまでもなく、大陸から渡ってきた様々な文化、思想をすんなりと受け入れた日本人は神道というベースがあったからこそ幅広いものに対応できたのだろう。

神道はアミニズムであり、他国と比べても日本はその原始的と言われている(?)思想が継続している。海や山に囲まれた島国の環境と大きな直接的な他国からの侵略が少なかったからだろう。近代国家を目指していく上で、多神教は矛盾が多く、人々を統率するには一神教のほうが説得力があるが、廃仏毀釈のようなことがあっても、この草木成仏の思想は消えることなく脈々と受け継がれてきたのは日本の環境によるものが大きいではと思う。しかし世界大戦後、急激にその思想は衰退していった。経済の発展により人間優先の思想が世界に広まったことによるものだろう。しかし、この短期間に自然環境は破壊され、利便性を追及するあまり人間社会の崩壊が迫っているのを感じながらもなかなか考え方を変えられないのは原状のようだ。大きな組織、世の中の流れに一度組み込まれてしまうと保身のためか、そこからなかなか抜け出せなくなってしまうのかもしれない。

アミニズムこそ宗教の原理であるが、今を取り巻く世界の環境はこのアミニズムを否定し近代文明を推し進めた結果多くの問題を抱えてしまった、いやその問題は今も増え続けている。日本の古い宗教美術をはじめ、海外のアミニズムを感じる宗教美術、プリミティブアートには今を生きる僕らに様々なメッセージを発しているように思えてならない。

 

2013/08/01

vol.148 山越阿弥陀図 ≪ 三坂堂通信 ≫ vol.150 Aminism