古いものを仕入れていると注ぐもの(注器)が他のもに比べて多いのに気がつく。
お酒を注ぐ徳利、お茶を注ぐ急須、お湯を沸かす鉄瓶ややかん、鉢に注ぎ口がついている片口と古くから国や時代を問わず注ぐ道具って本当に多い。そのフォルムは古いものも新しいものもほぼ変わらないものが多いような気がする。注ぐ動作、用途に関してもあまり変わっていないのだなあと古いものをみていると感じる。宴会の時お酒を注いだり、お茶をお客さんにいれたりと注ぐ行為はとりわけ日本人の生活の中に欠かせないもの。本来、酒や油、醤油など貴重な液体をこぼさないように生まれたものなのかもしれない。おそらく、最初は宗教的な儀式や神事で使われていたのでちょっと普段の道具とは違う雰囲気を持っているのだろう、どこか惹かれる形をしているのはそういう部分があるだろう。
徳利の語源は、色々な説があるようでお酒を注ぐ時「トクリ、トクリ」と音が出るとか、見た目以上にお酒が入っているので「徳になる」「利となる」とか、ハングルで酒壷のことを「トックール」というからとか、「雲具理(どんくり)」を意味とする説もあり「雲」は深い瓶の「雲壜(どんたん)」、「具理」は酒壷のことをいうらしいから「徳利」となったとか・・。お酒というものが昔は相当大事にされていたことが語源を調べただけでも察しがつく。
急須も本来、中国では酒の燗用の土鍋として使われていたものでそれが煎茶に転用された。「急な用に応じて用いるもの」といった原義があるらしい。
薬缶は言葉の通り薬を煮出す為に使われていたもの。
片口は、片方に口がある鉢のこと。1番庶民的なものだったようで、今の原型のようなものは日本の遺跡からも土器のものが多く発見されている。
注ぐと言う行為は、古くから今とほぼ変わらない動作で、道具もまた大きな変化はない。儀式的な意味合いと喉を潤す欲求が交じり合い無意識の中で何か特別なものとしてDNAの中に組み込まれているような気がする。お酒とお茶も大きな影響を及ぼしたのは言うまでも無い。
コミニケーションの方法も日に日に変化し、生活スタイルも刻々と変わる今、注ぐと言う行為は今後どのように変化し、道具もどのように変わっていくのか観察していきたい。
2011/07/21