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ウィレム・デ・クーニング

ジャクソン・ポロックと並び「アクションペインティング」の代表的な作家であり、20世紀の現代美術の革命を担った抽象表現主義者としてのウィレム・デ・クーニング。彼の作品や活動はポロックよりも日本人に馴染みやすく、比べるのがちょっと無理があるけれども民藝に通じている部分があるように僕は感じている。

Willem de Kooning当時、抽象表現主義者の中でデ・クーニングほど様々な技法を取り入れいる画家はいなかった。オランダからアメリカに移住する時に既に家屋塗装職人として一人前で教養も持ち合せていた。移住後、裕福な暮らしを送っていたとはいないが絵が売れて暮らしが上向きになった頃には、その博識は抽象画家の間で尊敬の念を集めていたらしい。彼の作品はデュシャン同様に作品を観る者がただの傍観者ではなく創造の過程に入る込むような感覚のものが多い。またひとつの道を提示していなく、様々なアプローチを提示しているようで難解なものとして人を翻弄するようにも感じるが、観る人によって如何様にも受け取れる懐の深さは、技術による高い技法や彼の哲学によるものが表れているからだろう。

アーティストの作品と民藝を比べること自体が無理があるけど、職人気質を伺える彼の画風からどことなく民藝を感じることが出来るのかもしれない(もちろん当時、東洋思想が与えた影響も大きいとは思う)。新しい表現として賞賛と批難のどちらの批評も受け、いまだにそれが続いている彼の作品からそういうものを感じるのは、特別だった芸術がより人々の生活に近い存在にさせたからなのだろう。第二次世界大戦後の多くの抽象表現者は芸術の大衆化を大きく押し進めた、その後現在に至るまでアートと呼ばれている表現方法は様々な形態になり、境界線がなくなりつつあるように感じているが何か大事な部分も失われているような気もする。それも新しいものが生み出される過程なのだろうか?

 

2012/01/26

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