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ハウス・オブ・ヤマナカ

ヤマナカ一応、末端であるが骨董、古美術の類を商いにしているので「東洋の至宝を欧米に売った美術商」という副題に惹かれ読んでみた。

感想は全く持ってスケールのでかい話である。山中定次郎は僕のような場末の古道具屋には想像もできないほどのビジネスを展開していたようだ。同じ職業と言うのはあまりにも恐れ多い、いや同業種じゃありません・・・。時代が違うと言ってしまえば、そうかもしれないが当時のように情報が乏しい時代にロックフェラーや名立たる美術館と取引をしていた山中定次郎とはどんな人物、魅力を備えた人間だったのか興味が湧いてくる。この本はノンフィクションで資料的要素が強いから人物像などはなかなか見えてこなく、様々な事例から想像するしかないが映画になってもおかしくないような人生を送っている。

日本の誇る第一級の美術品を欧米に売りさばくと聞くとなんだか良いイメージではないが、当時日本の美術品を高く評価したのは欧米であるし廃仏毀釈や情勢を考えればさほど悪いことだったとは思えない。そういったことが今まで注目されにくい原因だったのかもしれないが、むしろ、日本や中国美術を世界に認めさせた重要な人物で日本の美術に多大な貢献をした一人なのは間違いないのだろう。あとがきにもあるように研究は進んでいくのかなとは思う。今後、色々なことが明らかになって詳細な人物像などが解明されることを期待したい。骨董、古美術、美術史に興味のある方にはお薦め。

 

2012/01/19

vol.69 Blind side(ブランドサイド) ≪ 三坂堂通信 ≫ vol.71 ウィレム・デ・クーニング