古瓦の魅力

古瓦の魅力奈良や京都は社寺仏閣もさることながら、古墳や遺跡も数多くあります。美術館や博物館、資料館も多く、こういってはいけませんが僕の出身地福島県のそれらの展示とは格が違いすぎます(福島の方ごめんなさい!都があった場所ですので違うのは当たり前です、逆立ちしてもかないっこありません)。幸運にもそれに携わる方や携わっていた方と古いものを扱っているとひょんなことから知り合うことができ色々なことを教えていただく機会にも恵まれることがあります(福島では皆無でした・・・)。

Vol.2にも書いていた通り「アウトサイダー」よりの古道具屋ですので、その辺はあまり感心が無かったのですが(全く正反対のものと思っていました・・)、色々と見たり、見せていただくとどんどんとそちらの方へも興味が沸いてきます。しかし、アウトサイダーよりの古道具屋です、悲しいかな、そのものたちはあまり自分の扱うものにはあまり直結しないのが現実です(もちろん経済的な理由が大きな要因のひとつでもありますが・・)。しかし、日本という国がどのように形成され、どんな文化が生まれ、信仰はどのように変化し、それらはどんな風に現在の生活に残っているかと推察し、検証していくと今までとは違った視点で見えてくることがあると思います。そんなことで最近、古瓦に興味が向かっています(多少、建築にも携わっておりますので)。寺の境内や寺跡、平城京や長岡京色々な所から瓦は発掘されました。古いものでは白鳳時代、古美術愛好家の方には奈良時代のもの、有名なお寺や歴史にまつわる建物のものが人気があります。都が平城京に移り、南都が炎上し長岡京そして平安京へと都は移動していき、その跡地から様々なものがでております(現在進行形です)。特に瓦はそこにどんな建物があったかなどを検証する上で大きな手がかりになるそうです。面白いことに都が移る際、使える瓦は次の場所でまた使うというリサイクルが行なわれていました。平城京では白鳳、長岡京で奈良のものが多く出土しているのがそれを物語っています。重要な建物に使っていた高価なものだったことが頷けます。実際に出土されたものを観てびっくりするのが風化しているものの文様の美しさ、重厚感です。どこの文化、思想に影響をうけたか文様で推察できますし、大きな木造の官舎やお寺があったことを容易に想像することができます。また、土の中に1000年以上埋もれていても、高温多湿の日本の気候のなかで今尚その原型をとどめている精度の高さに感心します。瓦自体、今の建築で使用されるのが少なくはなってきましたが、その形や製造方法が基本的に変わっていないことにも驚きを感じますし、美的センスも数段上のような気がします。色々な価値観が変化している昨今、古い瓦ひとつをみても色々と考えさせることがあります。現在に生きる我々は果たして、文化的にも、科学的にも、精神的にも当時よりより良い方向へと歩んでいるのでしょうか?

 

2010.10.01

vol.2 インサイダーとアウトサイダー ≪ 三坂堂通信 ≫ vol.4 平清水 片口