東北で現代の感覚にも合う焼き物と言えば「平清水」。ブログなどでも紹介しておりますが、特に粉引きの片口は古民藝の中でも近年には珍しく評価が上がっているもののひとつ。福島に住んでいたときはかなりの数の平清水の粉引きの鉢、片口を東京に運びました(売りました)。頻繁に山形県や県境などに仕入れに行っていたので平清水に関しては扱った数は相当なものだと思います。でも、いざ探し始めると大ぶりのこね鉢は3個揃いで大中小のものは結構見つけることができますが、酒器に使える小ぶりの片口は、なかなかお目にかかれません。ましてや古手のものはかなり少なくなり、さらに状態の良いものは一年で2~3個あるかないか、今はもっと少ないことでしょう。なぜ、人気があるかといえば、粉引きの温かさと使い込んだ味の良さ、李朝の白磁、粉引きにその雰囲気が通ずること、ニューエイジの骨董世代には、デルフトを思わせるような柔らかさ、シンプルでミニマムでありながらも民藝の趣を感じさせてくれるからではないかと思います。僕も個人的には染付けより断然「無地派」、特に粉引きや白磁好き。そんな目線で地方の民窯を探すとまだまだ面白いものが見つかります。また、平清水を通して色々な人と出会い、情報を得ることによって東北の民窯の魅力を感じるきっかけになったので、奈良に引っ越した今でもとても思い入れのあるものです。もちろん、六古窯などの古くから評価されている古陶磁器はすばらしいものが多く、憧れも強く感じるものも多いですが、飾らずに等身大で生活にフィットするものと考えると平清水の粉引きの片口が自分には1番かなあと思います。しかし、残念なことに気に入っているものって必ず売れてしまい、手元に残らないのが道具屋の悲しい性。関西に来て、平清水や本郷、成島、相馬、楢岡などの東北の民窯に触れる機会が少なくなってしまったのは残念ですが、離れてみて、一段とそれらの魅力を再認識することができました。そろそろ、実家に帰省がてら仕入れに行こうかなとウズウズしてきました。
2010.10.08