コンテンツへスキップ

ハンス・J・ウェグナー

ハンス・J・ウェグナーデンマークの大御所デザイナー。知らない人でも彼のデザインした椅子は目にしたことがあるでしょう。骨董と関係あるのと言われそうですが、僕にとっては彼の椅子からいろんな方向にその興味は広がっていったような気がします。幸運にも通に評価の高い代表作「AP19]を手に入れ、毎日、座ってみるとその座り心地の良さに驚きました。晩年ウェグナーがこの椅子に好んで座っていたのも頷けます。使えば使うほどデザインありきではない、座る人を考え抜いたデザインであることを実感させられます。その後、ダイニングチャアーも1963年に発表された「CH36」というシンプルで美しい椅子にしました。こちらも同様ですばらしいの一言。この使いやすく、美しい「CH36」のデザインのソースは何なのかと自分なりに考えていくと「シェーカー家具」、「シェーカー教徒」に辿り着き、ウェグナーをはじめ北欧のデザイナーや北欧を問わず当時活躍する多くのデザイナー、クリエーター(おそらく現在活躍する方々も)が影響を受けていたことを知りました。シェーカー教徒はプロテスタントのキリスト教団で、一般社会から決別し、自給自足のコミュニティーを形成し、生活用品のほとんどを自ら製作、簡素なことを重んじ、言葉や道具、住まいをも徹底的に装飾を排除し極限までシンプルなものとしていきました。しかし厳しい戒律で男女関係までも禁じていたので19世紀には教徒が数名になってしまい衰退したと言われています。

あまりにもストイックすぎて近代化が進む時代に溶け込むことができなかったのでしょうか?しかし、彼らは美しすぎる道具、家具、建築物を創りだし、今尚影響を与えているのは事実。ウェグナーもシェーカー様式の家具をみてインスパイヤーされたのは、彼の椅子たちを見れば容易に判断できます。僕も厳格な戒律は別として「美は有用性に宿る」「すべてにおいて簡素であること」などの言葉、彼らの道具や家具を写真や本で見ただけですが新鮮さと憧れのようなものを感じました。家具や道具の仕入れの際は無意識に彼らのデザインにどこと無く面影があるようなものを探している様な気がします。豊か過ぎる物質社会で生きているからでしょうか?それにしても、色んなことを感じさせることができるウェグナーの椅子は何かが違う、物の本質を読み解くことは人間、自分を深く考えることなのかもしれない。

 

2010.10.26

vol.4 平清水 片口 ≪ 三坂堂通信 ≫ vol.6 シェーカー教徒