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超自然造形力

若草山日本の偶像、民間佛と呼ばれるものには宗教を超えた超自然的な力が加わってできたのではと思わせるものがある。一見、それが何であるのかわからないものや国籍や時代も超越してしまったと感じるものも多い(あくまでも個人の主観)。日本のものなのに、アフリカのものや東南アジア、中近東、ヨーロッパのものなのかと思うような造形がある。原始宗教としてのアメニズムという点がその共通点であろう。霊的存在が肉体や物体を支配するという共通の観念がそういうものを作り出したのかもしれない。ということは人間の力からかけ離れているかのような超自然的な造形は実はもっとも人間らしい自然な形といっても良いのかも知れない。そういった感覚が現代に生きる僕には少ないが為に超自然的造形と判断してしまうだろう。

現代に生きる僕らの想像力が昔に比べて欠如している。里に近い山は人口林であるが、少し奥に足を踏み入れると太古より変わっていないのではないかと思うような原生林が現れたりする。そういう日本の自然を見ていると日本人の信仰のソース(源)を見ているような感覚にとらわれる。山々の霊気を感じているということなのだろう。自然に寄り添って生きてきた民であるからこそ、素朴な信仰が生まれ、素朴な造形を生み出した。古い偶像や生活に使われていた道具をみていると日本人は自然とともにサステイナブルな生活を育んできたことは容易に理解ができる。

便利や豊か(?)といわれる生活を手に入れるために日本人はあまりに多くのものを失ってしまった。自然に対する想像力、美意識が欠如していなかったら原発事故も起きなかったかもしれない。

 

2012/08/02

vol.97 骨董と空間  ≪ 三坂堂通信 ≫ vol.99 白の話