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シェーカー教徒

vol.6は前回の「ハンス・j・ウェグナー」でちょっと書いた「シェーカー教徒」についてです。ちゃんとしたシェーカー教徒については詳しい文献がたくさん出ているのでそちらで読んでいただくことにして(僕も本を数年前読んだだけの知識しかありませんので・・)、今回のアプローチはシェーカー教徒の作った道具に似ている日本の古民具、古道具を考察してみます。無理やりなこじつけもありますが、あくまでも個人的な勝手な見解ですので、かるーい気持ちで読んでください。

日本の道具については以前取り扱ったものや所有しているものの画像ですが、シェーカーのオリジナルのものはちょっとしたものでさえミュージアムピースですので画像は当方では所有しておりませんので書籍や写真集などでお確かめ下さい。

曲げわっぱ
曲げわっぱ

オーバルボックスに似ていますが、始まりは日本のほうが古いのでは。シェーカーのボックスはスワローテイルと呼ばれる燕の尾に似た独特の留め方をしています。曲げわっぱ留め方は画像の通り。簡素さでは上回っているかも・・。
決定的な違いは材料と仕上げ、オーバルボックスはチェリーなどの広葉樹ですが曲げわっぱは檜やヒバなどの針葉樹。仕上げはオーバルボックスは素地に限りなく近いオイル仕上げですが、曲げわっぱは多くは漆仕上げです。使用の用途もことなりますし、地域によってもことなります。日本には仕上げが施されていない素地仕上げのものもありますが、優れた刃物文化が日本にはあったため、木の仕上げの表面がより密なものを可能にしているからです。こう考えて日本のものの方が製法も合理的で装飾も簡素のような気がします。

糸巻き掛け
糸巻き掛け

これは、ペグに似ております(かなり無理矢理)。道具の用途から比較に値しないものかも知れません。画像にはありませんが、ペグにかなり近いものを扱ったことがあります。違いは囲炉裏の煤で真っ黒だった点。この類は世界中にあると思います。物事を単純に考えれば、人間の思考は国は違えど、さほど変わらないのかもしれません。

ちりとり
チリトリ

こちらもシェーカーに限らず、世界を見渡したら結構同じようなものがあるかも・・・。でも素朴でシンプル、魅力を感じます。

戸棚
戸棚

ごくごくシンプルな本棚。仕上げが素地を活かしたものなので、シェーカーの室内にある壁の作り付けの戸棚に似ていると思うのは僕だけだろうか?ここまでくると言い方によっては何でも当てはまりそうだ・・。

古くから日本人の家屋も道具も実は非常に合理的で簡素化されていました。明治時代になるまで一般庶民に家具はあまりありませんでしたし、家の道具の個人の所有物といえば食事に使う器や碗とそれらを入れる箱膳ぐらい。住居も個人のスペースは無く、飾りらしい装飾はあまりありませんでした(唯一、床の間が飾る場所)。侘び寂びの文化も世界的に見ても非常にシンプルなものですし、和室は本来家具を配置することを前提に作られていないので日本人は西洋の文化が入るまで非常に簡素な生活をしていた民族だったのがわかります。地域、人種、宗教は違えど多くの共通点を見出せることは面白い。シェーカー教徒に強い関心を持ったのは豊か過ぎる社会に生きている反動からとシンプルに生きていた日本人としての潜在意識がそう感じさせるのかもしれません。シェーカーの家具や道具が美術的や資料価値、コレクターアイテムとして非常に評価が高いのは、それを作った背景に明確な哲学と思想が感じられるからこそだと思う。これは美術品や古美術品全般に通用する事柄だとは思いますが、とりわけ特に白人社会の宗教観の中では異質のものだったことも理由だと思います。日本人は世界でも稀ないろんな宗教観をすんなりと認めることができる数少ない民族です。色々な外部からの情報を分析し消化できるって結構良い事だと思います。

 

2010.10.31

vol.5 ハンス・J・ウェグナー ≪ 三坂堂通信 ≫ vol.7 白磁