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ものの値段

古いものの市場価値は古いものを扱う僕にとっては大事な問題といえる。相場みたいなものはある程度把握しておかなければならない。とは言え、経済が安定していない日本では美術品全般について言えることだが資産と考えてしまうと今は非常に厳しい状況だろう。国際的なマーケット(中国などなど)は活況とも耳にするが僕のような場末の底辺の業者にとってはあまり関係のない話だ。日本の市場の価値が全体的に下がる(例外はある)ということは既存の国内の古美術市場のシステムが機能していないことなのだろう。不況はもちろん、震災の影響も大いに関係しているだろうがが、古美術の社会的な信用性といえばよいのかそれを牽引する組織がエンドユーザーとの価値観の共用のバランスが取れていないことなのかもしれない。かといってネットオークションがそれに取って代わるものとも思えないし、それに頼りすぎてしまうのは良くないような気もする。一時的な短いスパンのトレンドの消耗品となってしまう可能性もあるので注意深く見て考えなければならない。

キャベツ畑

古美術を含む芸術を市場で考えることは非常に重要なことではあるけれど、それに頼ってしまうという考え方がもう時代にそぐわないことになってきているのだろうか。この業界だけではなく、すべての分野において新しいシステム、新たな価値観を各々で持つことが未来を有意義に生きていくうえで必要な気がしてならない。言ううならば、エネルギー問題と同じで原発のエネルギーと自然エネルギーもし僕らに購買の選択権があったら価格だけでは選ばない人もきっと多いはずだと思う。古美術、骨董も然り、手に入れた人にとって何か感じることできる、生活が豊かになるような、消耗品にならないものを扱っていかなければ、今後将来、売る側として生き残っていくのは難しいだろう。美術に対する各々の抱く価値は決して市場価値(相場)と等しいわけではなくなってきているように感じる。付加価値のあるものだからこそ、ものの背景はより重要になっていくのかもしれない。

 

2012/07/19

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