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FRANCIS BACON

FRANCIS BACONフランシス・ベーコンの絵を観たら忘れない感情が沸き起こる。さわやかさや清々しさとは全くかけ離れた人間のどろどろとした感情といえばいいのか、なんとも後味の良いとはいえない余韻が残るのである。

光と影があるのならば間違いなく影の強いアーティストであろう。それ故、記憶の中に鮮明に残り、時間が経つほどに、観たくないけど、また観たいという欲求が強くなるのだろう。

一体どのような人生を送ったのか、おそらく僕の日常には全くない環境で過ごしたのはその作品を観れば容易に想像はつくのである。僕が魅力を感じるものは、静の中に動を感じたり、影の中に光を感じたり、二つの相反するものがひとつの作品に感じるもの、そして自分との共通点があるかどうかだ。

彼との共通点を探っていくと、古い映画の「戦艦ポチョムキン」が数少ない共通点。あの有名な「オデッサの階段」のシーンは、後の映画にも多大な影響を与えた。乳母車が階段を落ちていき、女性が絶叫するシーンはベーコンも作品のイメージソースにしている。

僕と言えば小学校の頃、映画好きの2歳上の兄(間違いなく子供が興味を持つ映画ではない)に意味もわからず見せられた「戦艦ポチョムキン」はなぜか記憶に残っており、オデッサの階段の映画史における重要性を説かれたことも覚えているのである。叫ぶ女性の顔も一度しか見ていないのに記憶に残っているのである。この映画が唯一の僕と彼の距離を縮めた共通点であろう。

古美術も然り、ただ綺麗だけではつまらない、光と影、陰と陽が存在するからこそ魅力があり、そこに自分との共通点を強く感じるものはより魅力的だ。

 

2013/05/23

vol.138 Bohemian ≪ 三坂堂通信 ≫ vol.140 唯物主義