コンテンツへスキップ

トライバルアート

国宝火焔型土器
国宝火焔型土器 新潟県

古美術や骨董もワールドワイドで考えなくてはならない時代になってきたのかもしれない。先日、台湾のディーラーと色々と話して感じることがあった。今後の自分の進むべき方向は何なのか少し考えてみた。僕は本来日本人の多くが好む、陶磁器などの生活道具、染色品などの工芸的なものよりもトライバルアート、いわゆる原始美術と呼ばれる精霊信仰、祖先信仰の仮面や彫刻などのほうが俄然興味がある。とはいえ日本以外の世界の富裕層、知識層がほしがるアフリカ美術は到底、扱えないし、オセアニアや東南アジアのものについてもほとんど知識は無い。

世界的には、日本の独自の思想「民藝」のものよりも、祖先を崇拝し原始的な思考、行動で作られた面や彫刻のトライバルアートのほうがはるかに評価が高い。確かに原始的なストレートなものの方がよりダイレクトに伝ってくるのは確かだ。民藝の思想は僕は非常に共感を持っているが代表的な作品などについては「モノ」の価値が先行してしまい、思想という点では非常に理解しがたくトライバルアートのような精神性は感じにくいのが現実だ。しかし、僕らが意識していないだけで日本には数え切れないくらい多くの民間信仰が存在している。特に仏教伝来以前の古来の神道を感じるものはトライバルアートといってもよいものが多い。そういったものの評価は民藝とは違い評価は日本では低いのが原状である。日本に住み、古いものを扱うディーラーの僕らはもっとそういうものを掘り起こし評価し世間に紹介していかなければならないのかもしれない。

そろそろ、日本人もそういうものに向き合う時代に来ていると思う。そういうもの原始的なものに向き合っていると豊かな発想が生まれるように思えてならない。

 

2012/10/04

vol.106 古美術の持つ意味  ≪ 三坂堂通信 ≫ vol.108 crossover