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日本の武具

七人の侍武具と言ってしまうと古い物好きでもひるんでしまう領域である。僕自身も正直未知の領域でそれらを語るほどの知識も経験もないが僕なりの視点で考えてみたい。

僕がそういうものに興味を抱いたのは映画好きの兄が観ていた古い映画、黒澤明監督「七人の侍」を観たのが最初かもしれない。菊千代(三船敏郎)の身につけて甲冑が国宝級らしいとか大人びた解説をうるさいなあと思いながら聞き(当時は全く理解していない)つつも映画に惹きつけられたことを今でもはっきりと覚えている。日本映画であれほど衝撃を受けたのは後にも先にも「七人の侍」しか思いつかない。ストーリーはもちろん、画面から感じるリアルな空気は今尚圧倒的。当時のハリウッド映画には感じない何かを感じた。幼いながらも「世界の黒沢」の力を思い知ったのを今でも鮮明に覚えている(「椿三十郎」も好き)。

あのリアルさが伝わってくる映像は黒澤監督の才能は勿論、美術考証の役割も非常に大きいと今なら少しは理解できる。甲冑研究家でもあった日本画家の前田青邨らが登場人物の個性を考え抜き時代考証もしっかりとしているので奥行があるものになっているのかもしれない。

武具の美しさは、黒澤映画然り、使われていたリアルな魅力がひとつの大きな要因なのだろう。戦のほとんどなくなった時代のものもあるけど武士が分身のように身につけていたことは周知の事実。ただのお飾りではないところに興味が沸き起こるのかしれない。

歴史的背景ではなく美術工芸的観点からみても繊細且つ大胆で技術的にも優れた仕事をしているものが数多くあるし、日本の工芸を抜きん出たものにしたのはこれらが盛んに作られた歴史があるからと思わせてくれるものが多い。

イメージ的にベテラン(収集家)の領域、高額、特に刀剣の類は怖いというものが専攻してしまうけど金工、漆芸のクオリティーの高さは他の道具を圧倒している。刀剣の類はほとんど扱ったことはないけど(今後も扱うことはないと思うが)、あの美しさは魅惑的で日本のあらゆる文化の原点でもあり到達点でもあり、魂といえばいいのか武士の精神性を表現しているものであることは誰もが容易に認識できる。自分には関係ないかもと思う領分であっても色々考察することは悪くない。

 

2011/09/15

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