ウォーカー・エヴァンズ(Waiker Evans)の「Kitchen Wall,Alabama,Farmstead(台所の壁、アラバマの農場)」の写真が好きである。風化したペイントされた木の壁に、素朴なキッチン用品。今でこそ、商業的な写真でよく見かける構図だが明らかに違う点がある。それはリアリティーである。僕の個人的な好みは日本人のDNAの影響なのか無作為なものにより惹かれるような気がする。完全な無作為かと言われればそうではないかもしれないが、誇張を排除し事実を写そうとする気持ちはその写真からひしひしと伝わってくる。古の茶人も無作為の美を好んだことや宗教観が深く関係しているのか、時を経てが何か目に見えないものが作用して変化したものに対して愛着を感じることに一層「美」を感じる日本人にとっては好まれる写真家だと思う。
エンターテイメントが大きく文化に影響されている米国でも現在では評価されているものの、当時の評価は散々なものであったらしい。1929年大不況に陥った米国は、ルーズベルト大統領のニュー・ディール政策の一環ととしてドキュメンタリー写真のプロジェクトが行なわれた。それがFSA(農業安定局)プロジェクトで、農産物の暴落、旱魃、洪水などによって生活が苦しかった農業地帯を写真によって記録すること。エヴァンズも早い時期から参加していたが、衝撃的なイメージを好んだディレクターと意見が衝突し解雇されてしまった。その後も南部の農村で人々に寄り添うように写真を撮り続け、貧しさの中にも威厳を持って生きる人々の表情や生活を静かに淡々と写した。
今、日本は大きな困難の中にあるが、マスメディアの姿勢に疑問を感じる人も多いはず・・・。エヴァンズの写真には今の日本(すべて?)のマスメディアに対してより健全な答えがあるように思えてならない。
2011/03/31
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