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UPCYCLING

ピート・へイン・イーク 古道具を扱い始めた頃、アパレルショップかインテリアショップで廃材をつなぎ合わせて作られたオランダ人デザイナーのピート・へイン・イークの「スクラップウッド」シリーズのテーブルを見たとき近い将来のデザインやインテリアのあり方を考えさせらたことを思い出した。

彼のデザインしたものは、僕が古道具を扱うに関して感じていたことが具現化されているように感じたことが印象をより深めていたのではないかと思う。

彼の新たに作り出すものの素材は、彼のアイデアの源になっている。それらの廃材や不用品はただの素材ではなく、それ以上にデザインのコンセプトを導きだす為の重要な役割を持っている。
またそれらを使うことは、古い製品を再構築しデザインによってより高い価値観をもたせ、エコロジーの概念よりさらに一歩踏み込んでいるように感じた。

ピート・へイン・イーク 古い道具達も、そのものを見たらただの不要なものと見なす人も多いだろうが、それなりの空間に配置すれば見え方が変わってくる。既存の空間に道具を合わせるのではなく、古い道具に合わせた空間に配置すれば良いのではと思っていたので、彼の素材からコンセプトを導きだすことと似ていたのではと自分勝手に解釈していた。個人的な好みもあるが、日本の空間は既製品化された材料を使ったものが多いので古いものとの相性が必ずしも良くはない(と僕は思っている)。それらの空間を作る予算は既製品を使っているかといってもそう安価なものでもなく、そういったものの市場価値に疑問を感じていたのが彼の作品をみて共感した大きな理由かもしれない。

それから10年近く経った現在、UPCYCLING(アップサイクル:リサイクルの進化系のことらしい)を感じさせられるものが多くデザイナーやクリエーター、ショップや個人によって作られ販売されている。ただ単に不況によって持たされた需要なのか、環境に配慮したものか、新しい価値感なのかは、それともトレンドなのかは現状では僕には判断できないし、購入する個人の意識が今後どのように発展していくかもわからない。しかし、モノや環境が人間の生活や行動を変化させたり、意識を変化させることを促すものでなければ受け入れられなくなってきていることは強く感じている。それは、新しいもの、古いもの、アート作品、日用品であっても区別なく同じステージに向かっているのではないだろうか。

Piet Hein Eek のウェブサイト

 

2011/03/17

vol.25 石皿  ≪ 三坂堂通信 ≫ vol.27 ルイーズ・ネヴェルソン