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現代の空間における骨董の嗜好

茶室住環境によって「もの」の好みを大きく変わる。住環境には好み変える多くの要素を含んでいるのは間違いない。第一に骨董の世界では掛け軸や書画が売れなくなったと良く聞く、それはまさしく住環境と関係があると思われる。

ここ20年程の間に建てられた、もしくは作られた日本の空間は古来より必ずあった床の間というものが圧倒的に作られていない。床の間が消えると今度は畳の部屋が消えていく・・・。マンションや住宅も全室フローリングのものも珍しくない。こういう住環境がますます進めば数百年間、日本の床の間に飾られてきた物は必然的に需要がなくなっていくことだろう。

畳が減ってくれば茶道や華道もますます身近なものじゃなくなってくるのは誰が考えても納得がいく。日本人の生活のスタイルが大きく変化したと言っていいだろう。確かに、欧米スタイルの空間は快適である。海外で生活するチャンスがあったが、椅子やテーブル、ソファの配置のし易さは今の日本の空間も正直追いついていないと思うぐらい配置しやすかった。本来家具などは持たない前提で作られている日本家屋とは明らかに違うのである。家具を所有する家庭が急激に増え、こだわるものは床の間の掛け軸から家具などのインテリアに変化していった。確かに、こだわりの書画よりこだわりのヨーロッパの椅子のほうがかっこいいし、女の子にもてそうだ。そんなここ数十年の日本の住環境の流れをみて骨董を考えると形式的、伝統的なものに重心を置くのではなく、コンテンポラリーアートをみるような感覚で現代の住環境にあったものを提案していかなければいけないのだろう。実際に使えるものは、量販店に売られているもの、作家がつくったもの、職人がつくったものと同じ土俵だと考えたほうが良いのかもしれない。

住環境が人々に与える影響は僕が思っているより大きいのかもしれない。

 

2012/05/10

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