今だからこそ日本美術

絹本著色普賢延命像

絹本著色普賢延命像
ボストン美術館蔵

骨董業界に置いて日本美術は世界からみたら年々市場は減少している。もちろん日本の国内でもそれは切実に感じるわけで日本人でありながら日本美術の人気が下がってると認めざろうえない状況は少し寂しい。名店で修行したわけでもない場末の骨董屋だが日本で育ったものであれば何かしら貢献したいと少しは感じている。

僕はトレンドの欧米のすっきりとしたデザイン性に優れたアンティークを扱っているわけでもなく、今最も世界の市場が注目している中国のものを扱っているわけでもないし、またまた根強いファンが多い李朝ものを扱っているわけでもなく、いまどきの若手(?)なのに日本のものがメインである。業界の流れから見てもトレンドとは明らかに逆行しているものを扱っているかもしれないが、実はそういうものの中に今の日本人が生きていくうえで抱える問題に何かしらのヒントがあるように思えてならない。特に大陸の波がまだ感じない弥生以前の縄文時代、仏教伝来以前の古代神道の流れを感じるものは今の日本人に強いメッセージを放っているように思うわけである。もしかしたら、日本人ならず海外の人にとってもメッセージ性が強いものなのかもしれない。PCやスマートフォンの爆発的な普及にによって僕らは少しずつ本当の体験、リアルなことから離れていっている。実感、体感することが少なくなっているのだ。人間にとって大切なのは体感しその感触や肌さわり、臭い、その時の気持ちを自分自身の中にインプットし、実生活に置いてそれが何らかの形になってアウトプットしていくことだと思う。インプットしているのが仮想のものであっては決して五感で感じることはできないのできっとアウトプットもそれなりのものとなってしまうだろう。うまくは言えないがきっとリアルに感じられるものが骨董や古美術には多くあって、しかも、五感を鋭く研ぎ澄ませれば過去からの気配やメッセージを受け取ることができるのだ。言ううならば、無形の伝承されてきたものなどを見て感じるのと同じような感覚かもしれない。コピーや誰かの真似のような薄っぺらいものが多い今のものより、骨っぽさ、力強さ、生命力を感じられるから僕は魅力を感じている。この感覚を少しでもより多くの人に感じてもらえたらと最近は大真面目に考えたりしている。日本人のDNAに残る記憶を呼び起こせたらきっと面白いことが起きるはず!!TPPなんかどっかに飛んでいきそうだ!!

 

2013/02/28

vol.126 垂迹美術 ≪ 三坂堂通信 ≫ vol.128 祈りの造形は清いものなのか。